グラスでワインの味が劇的変化!ソムリエと実験した結果

5つのワイングラスと4種のワイン

戸田店長最終話『飲食店におすすめのワイングラスメーカー』をうかがったのち、寺井さん主催のウェイター向上員会の方々(飲食業のプロ)と共にグラスでどのくらいワインの味が変わるのか実験をしました。

食器屋の私が思っている以上に

  • ソムリエさんはグラスに気を使っていること
  • ワインの味はグラスのほんのちょっとの形状で変わること(驚)!!

を知りました。その実験結果を公開したいと思います。

実験:5つのグラスで4つのワインの香りや味がどう変わるのか?

実験方法

  1. テイスティンググラス
  2. シェフ&ソムリエ カベルネシリーズ ボルドー
  3. シェフ&ソムリエ シークエンス
  4. シェフ&ソムリエ カベルネシリーズ ブルゴーニュ
  5. シェフ&ソムリエ リヴィールアップシリーズ インテンス55
実験に使う5つのワイングラス

右から1~5番のグラスを並べています

上記5つのグラスで順番にテイスティングをして、その違いを比較する。

テイスティンググラスは、ソムリエ試験同様にワインを捉えるというか、基準を作る目的。

2-5のグラスで基準からどう変わるかを各自シートに記入し、その後ディスカッション。

仕様ワイン

  1. ソアヴェ・オーガニック2018
  2. ムルソー2018
  3. モンテリー2017
  4. Ch.カントメルル2014

の4本。ご覧の通り、素晴らしいワインを寺井ソムリエが用意してくれました。

5つのワイングラスと4種のワイン

参加者

グラスの数の問題と4種のワイン×5つのグラスということで少人数で実施。

  • 寺井ソムリエ
  • 佐伯ソムリエ(2021年よりソムリエ協会山口支部の支部長。寺井さんの後の支部長さん)
  • 新田氏(国家資格であるレストランサービス技能士2級をお持ちのサービスマン)

本来はもうお一人ソムリエール(女性ソムリエ)がお越し下さる予定だったのですが、レストランのご予約の都合上、残念ながら不参加となりました。

結論

実験の過程はこの後でお伝えしますが、長くなるので先に結論を書きます。

まず、グラスによって味が変わるかについては次の通りです。

  • グラスでめちゃめちゃワインの味が変わる!全然違う!!
  • どのグラスでどんな味になるかは経験が必要(寺井さんが言った通りに変化する!)
  • 経験なくても、ぶどう品種などから3タイプのグラスで対応できる(後ほど紹介します)
戸田
店長戸田
実験途中に、シェフ&ソムリエのグラスと別に寺井さんが持参してくれたグラスでもテイスティングしたのですが、ほとんど変わらない形状なのに寺井さんが言うように味が変わるのが最も驚きました。
グラスの違いは本当にちょっとなんですよ!

続いて、それぞれのワインにどのグラスが合うかはこのようになりました。

ボルドー シークエンス ブルゴーニュ インテンス55
ソアヴェ ×
ムルソー ×
モンテリー △-〇 ×
カントメルル ×

 

では、それぞれを詳しく見てみましょう。ちょっと長いので各ワインで興味あるものを開いてご覧ください。

ソアヴェの実験過程を読む

a:ソアヴェに合うグラス

まずはソアヴェから

ソアヴェ・オーガニック2018(造り手 サルトーリ)1,210円

「まずはイタリアを代表する爽やか白ワイン『ソアヴェ』です。
このソアヴェは有機認証取得しているのに、毎年健全なワインに仕上がり、かつ他のソアヴェと比べても安い!
そして決して薄っぺらくないんです。なんなら分厚い!じゃあ、テイスティングしてみましょう。」(寺井ソムリエ)

1.テイスティンググラス(基準)

爽やかでながら味わい深さもあり、さらに苦みというかイタリアの白によくみられる香ばしさがあります。

2.シェフ&ソムリエ カベルネシリーズ ボルドー

まず香りが捉えにくいです!私だけかと思っていると佐伯ソムリエ、寺井ソムリエも同様の意見でした。

香りだけでなく味わいに関しても、なんだか水っぽくなりました。

ソアヴェを飲むには不人気のグラスだったのですが、寺井ソムリエだけは好印象とのことでした。

「もともと私はイタリア白のほろ苦さが、ちょっと苦手なんです。その部分が減少され、軽快さ、活き活きさ、スイスイ飲める良さが前面に出るのからこのグラスは好印象。でも、お客様にはこのグラスでは提供しないですね」(寺井ソムリエ)

3.シェフ&ソムリエ シークエンス

続いては今回のグラスの中では最も小さいシークエンス。

「これが一番美味しいですよね。しっかりとソアヴェが味わえる」(新田氏)

「なんと言っても香りがこの4つの中では一番良いですよね。
味わいもソアヴェの爽快さはそのままに、このソアヴェが持つ味わい深さをしっかりと捉えられます。」(佐伯ソムリエ)

「ワインをサービスするならこのグラスです!でも、先ほどの逆で自分の好みとしては私の苦手な部分がしっかり表現されるので苦手です」(寺井ソムリエ)

戸田
店長戸田

私も圧倒的にこのグラスが美味しいと感じました。

そして、このグラスでソアヴェを飲んでいると、料理が欲しくなるんです!

ワインの魔力ですね!イタリアンが食べたい~!と思わせてくれるんです。

4.シェフ&ソムリエ カベルネシリーズ ブルゴーニュ

これは香りも乏しいし、味が薄いです!佐伯ソムリエ、新田氏も同意見でした。

寺井ソムリエは、優しく最も上品。ソアヴェらしさはなくなるが、エレガント上質さを感じることができるという意見でした。

5.シェフ&ソムリエ リヴィールアップシリーズ インテンス55

4のブルゴーニュグラスに同じく香りはやはり乏しいです。

ただ4よりは、味わいの点でソアヴェの爽やかさシャープさが表れるとソムリエのお2人のコメントがありました。

戸田
店長戸田
私個人としては、このグラスは人気商品なのですが、ごく一般的な形でこのグラスより安価なシークエンスのほうが美味しいことに驚きました。
ソアヴェに合うワイングラス

ソアヴェを飲むには、小ぶり~中ぶりくらいのスタンダードな形のワイングラスがおすすめと言ってよいと満場一致でした。

最もソアヴェに合ったのはシークエンス

ソアヴェに合うのはシークエンス

ムルソーの実験過程を読む

b:ムルソー(ブルゴーニュ白)に合うグラス

ムルソー2018(ドメーヌ・ミッシェル・デュポン・ファン) 7,150円

「ブルゴーニュの高級ワインですね。シャルドネを使ったリッチなワインの代表として選びました。」(寺井ソムリエ)

1.テイスティンググラス

柑橘の風味と完熟した果実の風味、白や黄の花、ミネラル、樽由来の香ばしさのバランスよくリッチでボリューミーな素晴らしいワインです!

2.シェフ&ソムリエ カベルネシリーズ ボルドー

まず香りは一気に減ります。味わいに関しても爽やかさは少し増しますが、ムルソーのボリューム感が減ります。

せっかくのムルソーの良さが減るイメージと満場一致。

その中で、寺井ソムリエは「でも、思ったより、はるかに良い」と言っていました。

ソムリエ寺井
ソムリエ寺井
不思議とボルドー白ワインのようなニュアンスが出ますね。
3.シェフ&ソムリエ シークエンス

強いです!トゲトゲしく、ムルソーのエレガントさが失われます。

「アルコールを強く感じて、お酒だぞ!って主張する感じ。苦手」(新田氏)

「ただ、とにかく『濃いワイン』が好きな方もいるので、そういう方には良いかな。」(佐伯ソムリエ)

といったコメント。

4.シェフ&ソムリエ カベルネシリーズ ブルゴーニュ

ムルソーの豊かな香り、コクのある味わいをきちんと表したまま、最も上質さ、上品さを引き出してくれるグラスです。

「これぞムルソー!」(佐伯ソムリエ)

「上品さ、コクと酸のバランス、良いですね。」(寺井ソムリエ)

5.シェフ&ソムリエ リヴィールアップシリーズ インテンス55

これも4のブルゴーニュグラスに近い評価ですが、こっちのほうがワインが強くミネラリーになります。

「3のシークエンスほどではないけど、通ずる部分があります。苦手とまではいかないけど4よりかなり劣ります」(新田氏)

「4のほうが上品で良いと思いますが、ムルソーのポテンシャルの高さ、将来性はこっちのほうが強く出ていると思います。」(佐伯ソムリエ)

「迷いましたが、このグラスをベストにします。ふくよかさは物足りないけど、活き活きした果実味、ハチミツのニュアンスもはっきり。ミネラリーで堅さあるけど若さならでは。何よりポテンシャルの高さを感じます。」(寺井ソムリエ)

ムルソーに合うワイングラス

ムルソー(ブルゴーニュ白)を飲むには、丸い大ぶりのワイングラスがおすすめと言ってよいと満場一致でした。あとは4のグラスと5のグラスのような差で調整ですね。

ムルソーに丸いブルゴーニュグラスは安定の相性

ムルソーに丸いブルゴーニュグラスは安定の相性

丸いグラスで口元がシャープだとムルソーもミネラル感が増す

シャープな丸いグラスだとムルソーもミネラル感が増す

モンテリーの実験過程を読む

c:モンテリー(ブルゴーニュ赤)に合うグラス

モンテリー2017(モンテリー・ドゥエレ・ポルシュレ)6,380円

「ブルゴーニュの村の中ではマイナーですね。この造り手はルロワの醸造長も務めた偉大な先代を受け継いだ娘さんが造っているのですが、素晴らしい味わいです!」(寺井ソムリエ)

1.テイスティンググラス

赤い果実をクラッシュした風味。高級ブルゴーニュならではの妖艶さを感じ取れます。

2.シェフ&ソムリエ カベルネシリーズ ボルドー

明らかにテイスティンググラスより香りが広がります!

「合わないと思ったけど、想像以上に良い!」(佐伯ソムリエ)

「赤い果実のピチピチとした若い果実味、ミネラル感を非常に感じる。予想外!」(寺井ソムリエ)

新田氏と私はソムリエのお2人のような表現はできませんが、テイスティンググラスよりは、はるかに良いという感想です。

3.シェフ&ソムリエ シークエンス

これは、物足りないというかワインがもったいないです。

一気に普通の格(レベル)のワインになってしまいます。

4.シェフ&ソムリエ カベルネシリーズ ブルゴーニュ

高級ブルゴーニュ赤ワインの良さを実感できるグラスです!

「赤い果実の風味が広がり、まさにブルゴーニュの華やかさエレガントさを楽しめます!」(佐伯ソムリエ)

「ブルゴーニュの妖艶さが増しますね。」(寺井ソムリエ)

戸田
店長戸田
私、これ好きです!高級ブルゴーニュ!!美味しい!
フレンチ食べたい!
こんな言葉しか言えませんが、美味しい!!
5.シェフ&ソムリエ リヴィールアップシリーズ インテンス55

ムルソー同様にこれが2番目に良いという意見が多かったです。

「ちょっと若さが出るというか、ミネラル感が出すぎる気がします」(佐伯ソムリエ)

「白同様迷いましたが、若いブルゴーニュならではの弾ける赤い果実の風味を楽しむを優先して、このグラスが1番良いです。ただ、佐伯さんがおっしゃるように堅いのが悩ましいですが、そこはこのワインの若い良さとして捉えます。」(寺井ソムリエ)

モンテリーに合うワイングラス

ムルソー同様の結果となりました。

モンテリー(ブルゴーニュ赤)を飲むには、丸い大ぶりのワイングラスがおすすめと言ってよいでしょう。

モンテリーに丸いブルゴーニュグラスはエレガントな合わせ方

カントメルルの実験過程を読む

d:シャトー・カントメルルに合うグラス

シャトー・カントメルル2014  5,940円

「今日はメドック格付け5級のワインまで用意しました!今日のワインはどれも実験ではなく、純粋に楽しみたいワインですよね!!」(寺井ソムリエ)

1.テイスティンググラス

カシスのような黒い果実の風味、血や鉄、レバーのようなミネラル、アニスのようなスパイス感、ダークチョコのような風味と非常に複雑です!

2.シェフ&ソムリエ カベルネシリーズ ボルドー

これはもう、ウマイ!!とうなりますね。テイスティンググラスと明らかに違います!

「素晴らしい!こんな大きなグラスだが、ワインの香りがしっかり立ち上がり、ボルドーの魅力をたっぷりと感じることができる。」(佐伯ソムリエ)

「高級ボルドーはこのグラスですね!香りに奥行がかなり増します。ボルドーらしいユーカリのような清涼感も感じること出来、非常に複雑になります。」(寺井ソムリエ)

新田氏と私はソムリエのお2人のような表現はできませんが、このグラスだけ飛びぬけて良いのは確実に分かりました。

3.シェフ&ソムリエ シークエンス

香りは思ったよりも良く感じられます。味わいも美味しいです!

ただ、5,000円を超えるようなワインとまでは感じられないです。

4.シェフ&ソムリエ カベルネシリーズ ブルゴーニュ

あれ?モンテリーを飲んだ時と違い、香りが感じにくいです!?不思議!!

「酸が感じやすくなり、ボルドーの凝縮感などが感じにくいです」(佐伯ソムリエ)

「香りが乏しいです。味わいも軽くなります。ボルドーの力強さが苦手な方には、優しく飲めるグラスとも言えます。旦那さんがボトルででボルドー頼んだけど、実は奥様が苦手な場合とか。」(寺井ソムリエ)

「あ、私、ちょっとそれ分かるかもしれません。ブルゴーニュに比べ、ボルドーは少しタンニンが得意ではないので、このグラスだと飲みやすいです。」(新田氏)

5.シェフ&ソムリエ リヴィールアップシリーズ インテンス55

ちょっと中途半端な印象でしょうか。1や2ほど力強さ感じないし4のようにすごく優しいわけでもない。

「うーん、良いと言えば良いかな。4同様優しく飲めるけど、4より力強さがあります。」(佐伯ソムリエ)

「香りは乏しいですね。食感がツルンとしています。これ、私が春ワインとしておすすめする言葉です。ボルドーらしさや高級感が感じられないのですが、春ワインとしては良いでしょうか・・・」(寺井ソムリエ)

カントメルル(ボルドー赤)に合うワイングラス

これは断トツです!

カントメルル(ボルドー赤)を飲むには、大ぶりの果実の“びわ”のようなグラスがおすすめと言い切ることができます。

 

カントメルルには果実のビワを思わせる縦長の大ぶりグラス

微妙な形の差でも味は全く違う

実験が終わってから、グラスの本当に微妙な違いで味わいが変わることを体験しました。興味がある方はご覧ください。

微妙な形の差でも味は全く違うを読む

寺井ソムリエが白ワインのムルソーや、赤ワインのモンテリーの時に、この熟成具合なら、もう少し丸いブルゴーニュグラスだとバランスよく楽しめると思うと言い、ボルドー赤のときも、

ソムリエ寺井
ソムリエ寺井
これも今の熟成具合だと、もう少しだけ角ばっていない緩やかな果実の“びわ”のような形のグラスだと、もっとチョコのような香ばしさを感じて良いはずです。

とおっしゃったんです。

そして、一通り実験が終わったあと、持参してくれたグラスを取り出してくれました。

そして、そのグラスに入れて飲んだのですが・・・

戸田
店長戸田
違う!
全然違います!しかも、グラスの形状はちょっとしか違わないのに、本当に寺井さんが言うような変化を感じます!
これは衝撃です!!
2つのブルゴーニュグラス

奥に見えるグラス(手前じゃないですよ)の右側が今回使った丸いタイプ、ワインが入っている左側が寺井さん持参のもの。ほぼ同じに見えるけど味は全然違う

丸みあるボルドーグラスと角ばったボルドーグラス

奥の左側(こちらも手前じゃないです)が寺井さんが”びわ”形というボルドーグラス。本当にチョコのような香ばしさが増えた!

これには、一同驚きました。

寺井ソムリエは普段から自宅でも1つのワインに何脚もグラスを出して実験しているそうです。

寺井ソムリエが自宅でワインとグラスの相性実験している写真

自宅でワインとグラスの相性実験している寺井ソムリエ。グラス5脚、しかも似た形ばかり・・・^^;

でも、ネット上には大きなグラスだとワインが美味しくなるというような書き方もありますよね?

特定のワインではなく、どんなワインでも美味しくなると聞いたことがある方も多いと思います。

これについて寺井ソムリエに質問すると、

ソムリエ寺井
ソムリエ寺井
グラスを大きくすればどんなワインも美味しくなると思っている人もいるけど、それは間違い。
ソアヴェのようなワインに限らず、高級ブルゴーニュでも超古酒ならグラスは中ぶりくらいにしてあまりグラスを回さないほうが良いことだってあります。

と解説してもらい、これにも驚きました。

では、このワインにはこのグラスというのは、どうやって選べばよいのでしょうか?

「残念ながら、実験結果を蓄積する経験です。実は今月のコンサル先レストランのグラスワインも当初は違うグラスで提供しようと思っていたのですが、グラスを変えました。」

ということは、私のような食器屋にはピンポイントで選ぶのは難しいということでしょうか。

「うーん、それは確かに難しいです。でも、これは記事を書かせていただいた最初の話に戻るのですが、そもそもピンポイントとなるとグラスを何脚用意しますか?という話になります(自宅や飲食店に)。」

確かに・・・。

~まとめ~ 揃えるべきグラスは3タイプ

戸田店長ソムリエがおすすめするワイングラス購入時の選び方・コツ!』や『飲食店で揃えるべきワイングラス」』に書いてくださった話が良くわかりました。

上記の記事中に“飲食店で最初に揃えるべき2+2グラス”というのがありましたが、フルートシャンパングラスに加え、今回のグラスで言えば、シークエンス、ブルゴーニュ、ボルドーの3つということですね。

実際、今回の実験では、キレイにこの3つに合うワインがありました。

ボルドー シークエンス ブルゴーニュ インテンス55
ソアヴェ ×
ムルソー ×
モンテリー △-〇 ×
カントメルル ×

今回の1回だけの実験で結論付けず、今後もこのような実験はしたいと思いますが、明らかに今回は寺井ソムリエのおっしゃる3つのタイプのグラスが活躍しました。

つまり、(熟成具合でピンポイントにグラスを変えようとするとグラスが無限に必要になるけど)3つの形状のグラスを用意しておけば、多くのワインに対応できるということなのです!

今回のワイングラスに興味がある、自分の店で揃えるにはどのグラスが良いかという疑問のある方は、是非当店までお問合せください。