
グラス購入のコツに引き続き、今回は『飲食店で揃えるべきワイングラス』を寺井ソムリエに教えてもらいましょう。
プレゼントワインショップ オーナーソムリエ 寺井剛史(てらいつよし)氏

日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ
日本ソムリエ協会 山口支部支部長(2018-2020年)
全国技能グランプリ レストランサービス部門3位
北九州市『技の達人』 認定者
飲食店で揃えたいワイングラス


ご家庭同様、最大何脚グラスを揃えるかを考えましょう。それを元にどれを揃えていくかはご家庭での選び方と似ています。
「必ず揃えたい2+2種」をまず紹介しますが、お店の規模によってはこのグラスのみでも大丈夫ですし、絶対に必要なグラス2種(1番と2番)のみでも十分なお店もあります。
必ず揃えたい2+2種類のワイングラス

まず、絶対に必要な2つのグラスは
- フルートシャンパングラス
- 中ぶりのワイングラス
です。

過去のレストランでも最も使用するグラスはこの2タイプです。
では、どんな時に使用するか説明していきますね。
1.フルートシャンパングラス

これはもちろん、スパークリングワイン、シャンパンに使います。
近年はストレートなフルートシャンパングラスではなく、ふくらみのあるシャンパングラスも増えていますよね。
もし、お店のグラス販売がカヴァやスパークリングワインなら、ストレートなフルートで良いと思いますし、私はスタンダードクラスのシャンパンでもストレートなフルートグラスが好みです。
ただ、ドンペリのような超高級シャンパンなら、このグラスよりもっとふくらみのあるシャンパングラス(後述の5番のグラス)を使用します。

2.中ぶりのグラス

汎用性のあるグラスです。
白ワイン全般に使いやすいですし、赤ワインにもおすすめです。
数量も最も在庫するべきグラスですね。グラスワインも全てこのグラスで提供しても大丈夫なお店もたくさんあるはずです。
また、ワインが主力商品ではなく白、赤1種類ずつのお店はこのグラスがあれば大丈夫です。


では、必ず揃えたいグラスの+2の2つを解説します。
3.ボウル部分が果実の“びわ”型の大ぶりグラス

力強く凝縮感のある赤ワイン、タンニンのしっかりした赤ワインにおすすめです。
例えば、カベルネ・ソーヴィニョンというぶどう品種の赤でグラス価格1,000円以上とか、ボトル価格6,000円以上とかのワインです。
もちろん本来は価格ではなくワインの味わいでグラスを変えるべきなので、試飲をして違いが分かるようになればそれぞれのワインに合うグラスで提供しましょう。とはいえ、すっごく大雑把に言うと安いワインにはおすすめできません、味わいが薄っぺらくなることがあるからです。
あと、白ワインでもソーヴィニョン・ブランによる高級白やアルザス地方の白で高価格なボトルワインにも使えます。
慣れるまでは、次のおすすめのぶどう品種のうち7,000円を超えるボトル販売に使ってみてください。
おすすめ品種(赤)
- カベルネ・ソーヴィニョン
- メルロ
- カベルネ・フラン
- シラー
- サンジョヴェーゼ
- テンプラニーリョ
- ネッビオーロ(ただしネッビオーロの酸を活かしたい方は4のグラス)
おすすめ品種(白)
- ソーヴィニョン・ブラン
- リースリング
- ゲヴュルツトラミネール
- ピノ・グリ
- ミュスカ
- アルバリーニョ
4.ボウル部分がまん丸型の大ぶりグラス

赤ワインでエレガントなタイプ、具体的にはピノ・ノワールというぶどう品種などにおすすめです。
またシャルドネというぶどう品種の白ワインで6,000円以上でボトル販売するもの、1,000円以上でグラス売りするものにもおすすめです。
こちらも色々とお店の皆さんで実験してみてほしいのですが、慣れるまでは次のおすすめのぶどう品種で使ってみてください。
おすすめ品種(赤)
- ピノ・ノワール
- ガメイ
- マスカットベーリーA
おすすめ品種(白)
- シャルドネ
グラスの揃え方
では、上記の1~4のグラスをどのような数量で揃えましょうか。
最初にお伝えしたように私が支配人を務める店では1,2,3,4のグラス全て40名の団体様にもセッティングできる数があります。
でも、なかなかそんなに収納スペースがある店はないですよね。
そこで、仮想飲食店を設定し、収納スペースを想定して具体例を挙げてみますね。
【ケース1】10名様までの団体様なら入る夫婦のお店
収納スペース36脚程度を想定。
1番のグラス10脚、2番のグラス18脚、3と4番を4脚ずつ
です。
団体様にシャンパンを提供するときのためにMAX数の10脚を用意。
2番のグラスも本来は20脚ほしいです。白と赤を提供するためです。
ただ、一般営業で4名様の予約は決して珍しいわけではなく、そこでボトルワインを提供するときのことを考えると
どうしても3,4番のグラスが4脚ずつほしい。
ということで、この組み合わせです。

2番のグラスをあと2脚、自宅に持っておいて団体予約の時だけ持ってきます(笑)!
【ケース2】お1人で経営するビストロ、小料理屋
お水のお客様も多く、グラスワインは銘柄が書いておらず白か赤の選択肢のみ。
収納スペースも多くなくMax12脚想定です。
この場合は、1番のシャンパングラス4脚と2番のグラス8脚です。
シャンパンはやっぱりボトルで注文してくださる方もいるので4人分くらいは必要です。
あとは2番のグラスを万能グラスとして使います。
経営していて、思ったよりワインが出るようならグラスを増やしたいですが、スペースには限りがありますよね。
私ならそんな時はビールを2番のグラスで提供するように変えて、ビールグラスを減らしてワイングラスを増やします。
実際、ビールはワイングラスで飲むと美味しい場合が多いです。
ビール大好きな私も焼肉屋さんとかの凍ったジョッキのビールは大好きですが、仕事としてビールをテイスティングするならジョッキではなく薄い口当たりのグラスを選びます。

団体、小団体の予約が入る頻度で考えるとよいです。
つまり、先に書いたように団体様用に同じタイプのグラスを使えるように準備する揃え方にするか、4名様くらいまでのお客様が多く、高級なワインをよりお楽しみいただけるような揃え方にするかです。

はい、ワインに力を入れるお店は+3のグラスを用意すると良いです。
ワインに力を入れる店が導入すべき+3種のワイングラス

こだわればキリがないくらいグラスが必要
高級ワインを販売するなら、やはりグラスもワンランクUPさせていところです。
とはいえ、この+3のグラスはさきほどまでのグラスより更に大きいので収納スペースを大きくとるのと、グラスが薄く割れやすいことが多いです。
それらもよく考えたうえで導入してみてください。
- ふくらみのあるシャンパングラス
- 3のボウル部分が特大のグラス
- 4のボウル部分が特大でグラスの口元が開いたチューリップ型のグラス
それぞれどんなワインに対して使うか解説しますね。
5.ふくらみあるシャンパングラス

1のシャンパングラスでお伝えしたように、ドンペリのような超高級ワインをボトルで注文してくださる方もいらっしゃるなら、このグラスを揃えておきましょう。2脚、もしくは4脚といったところでしょうか。
6.3のボウル部分が特大のグラス

左は2番、3番のグラス。比べると一番右(6番)は特大なのがよく分かる
5や7より多く使うのではないかと思います。高級ボルドーをお召し上がりの方に使うグラスです。
味の変化はもちろんですが、他のテーブルから見ても、「あのグラス大きい!」と思うような差をつけることで顧客も特別感を得られます。
7.4のボウル部分が特大でグラスの口元が開いたチューリップ型のグラス

こちらは高級ブルゴーニュ用です。
4に比べて、果実味を引き出すことができます。若すぎる高級ブルゴーニュや、ニューワールドのピノのように果実味がウリのピノ・ノワールにもおすすめです。
味の変化としては私も使いたい場面が多いグラスではあるのですが、私がいる店でも収納スペースの問題でこのグラスは数脚あるだけで、あまり使う場面は多くありません。
優先順位を考えると、このグラスを増やすよりも10名様にキチンとグラスを揃えられるとか、通常使うグラスワイン用のグラスがクリスマス満席でも足りるようにすることを重視しているためです。
このへんは客層やお客様の入り方、お店の考え方次第です。

あと、飲食店ではグラスメーカーも大事ですので、次回は『飲食店で使うのにおすすめなグラスメーカー』についてお話します。
まとめ ~飲食店はお店のスタイルで選び方を変える必要がある~

寺井さん、ありがとうございます。
寺井さんのワイングラスの選び方、アプローチの仕方、やっぱり私たち食器屋目線と異なり、接客のプロであるソムリエ目線(お客様目線)なのが、とても勉強になりました。
私なりにまとめてみたいと思います。
- まずは、お店に置けるグラスの最大数を決める
- 「必ず揃えたい2+2種」の1番と2番をベースに考える
- お店に1万円以上のボトルワインがあるなら3番と4番のグラスも加える
- さらにワインにこだわる店なら+3のグラスのうち必要なものを揃える
ということですね。
皆様、当店「Sara-lia」では、これらのグラスをまとめてご購入いただくことが可能です!
ご購入方法
当店でご用意できるグラスを1番~7番まででタイプに分けて、それぞれのタイプでの一覧ページを作りました。
ご自身でそれぞれをカートに入れて、ご購入が可能です。
また、在庫数が足りない場合も取り寄せが可能なものが多いので、お気軽にお尋ねください。
寺井さん、改めてありがとうございました。飲食店におすすめのグラスメーカーの記事も楽しみにしています。

この記事の監修者 寺井剛史ソムリエ

大学生のころのアルバイトがきっかけでソムリエを目指す。
ホテル入社後、ソムリエ取得。その後、日本では珍しいフリーのソムリエとして独立。
飲食店や小売店のコンサルティングを行うかたわら、「ワインを贈りたいけどワイン選びが分からない」方のために、プレゼントワインショップを設立。
技能グランプリ レストランサービス部門 全国3位
北九州「技の達人」認定者 / 福岡県知事表彰 受賞
日本ソムリエ協会認定 シニアソムリエ
日本ソムリエ協会 山口支部初代支部長(2019-2020)